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ボイスドラマ(同人)

【VD感想】『謎めく少年と突飛なカレイドスコープ / ダスティ・ベルの不思議な絵本』/i magination note.


謎めく少年と突飛なカレイドスコープ / ダスティ・ベルの不思議な絵本』 i magination note.

まさしく万華鏡のように幻想的で鮮やかな「美」に、人間の「醜」が絶妙に混じりあった物語だなと思いました。

Chemmyさんの作品が私はとても大好きで、全作聴いているのですが
今回は今までの中でも比較的分かりやすく、しかし不可思議さ、奇怪さ、残る謎…という、Chemmyさんらしさがしっかりと詰め込まれた作品であると感じました。
また、相変わらずChemmyさんの編集は聴いた瞬間から「あ、この人編集が上手い!」と直感的に感じられるもので、
今回の臨場感ある編集も素晴らしく、あっという間に世界に引き込まれて行きました。
多分、物語世界の空気感を作り(生み)出すのがほんとうにうまいのだと思います。

以下、各作品の感想です。

◎謎めく少年と突飛なカレイドスコープ
試聴を聴いたとき、山口和将さんの演技良いな!という風に思いました。
そして本編を聴いても、その感想は変わりませんでした。
甘ちゃんな感じ、格下(だと思っている)相手に対する傲慢な感じ、クズっぷり(笑)、心からの恐怖、狂気に飲まれた様子……
それらすべてをたった一人の人間がここまで見事に演じられるのか、と感嘆の息が漏れます。
今まで聴いてきた彼の演技の中で一番好きかもしれません。

最初に通しで聴いて感じたのは、タイトル通りの「突飛なカレイドスコープ」世界だ、ということでした。
展開(場面)がまさに「万華鏡」の如くクルクルと変化していき、雰囲気もがらりと変化していって、
聴いていて飽きることがありませんでした。
更に、そうやってクルクル変化する場面が、でもぶっ飛んでいくことがまったく気にならない、不思議な構成だな、と。
本当に、自ら万華鏡を覗き込んでまわして、変わっていく景色を楽しんでいるかのような……そんな気持ちにさせられました。

そもそも、その万華鏡を覗き込んだ(=私がボイスドラマを聴きはじめた)時点で見えた景色(場面)も、
本当に現実だったのだろうか? もしかしたら、くるくる変化する万華鏡の景色の途中から見始めたのでは?
もしそうなのであれば、ジェレミアは本当に「もう二度と幸せになれない」んだ…とか
そんなことまで考えてしまったりして(笑)
リュカとヒューバートが「お兄さんのことを前から知ってる」というのも、もしかしてそういう意味が含まれていたのでは?とか……深読みしてしまいました。

人間は、多分、生きているうちに一度は「これって本当に現実なのか」みたいなことって考えると思います。
「もしかしたら、別の世界があって、その世界の住人が自分たちのことを見てるかも?!」とか、
SFというかファンタジーというかそういう夢想を抱くことって、多分あるんじゃないかなと。
まさにそんな夢想を抱くようなお話でした。

ジェレミアの、色々ひどい目にあっても、根のクズさが変わらないのがいっそ清々しくて好きでした(笑)
本当に自分勝手でガキっぽいクソ野郎で、頼むから一発殴らせてくれ……みたいな気分にもなる絶妙なクズ男。
私の一番大好きなタイプのクズですね……(笑)
「どうして僕だけが不幸な目に~」という台詞が終盤にあることが、彼のすべてを物語っているような気がします。
こんなキャラだからこそ、

>そもそも、その万華鏡を覗き込んだ(=私がボイスドラマを聴きはじめた)時点で見えた景色(場面)も、
>本当に現実だったのだろうか? もしかしたら、くるくる変化する万華鏡の景色の途中から見始めたのでは?
>もしそうなのであれば、ジェレミアは本当に「もう二度と幸せになれない」んだ…とか

…だったとしても、いまいち同情ができなくて、それがまた良いですね。
不憫なんだけど、正直ざまあみろ!とも思えてしまうというか。

キャスト様たちの演技もまた絶妙で。
山口さんに関しては一番最初に書いたとおりなのですが、hie.さんと鶏子さんも素晴らしく。
万華鏡を覗き込ませたときの「ようこそ、不思議な世界へ」という台詞で、一気にそれまでの空気を消し去り、
「あ、これからやばいことがはじまるな」というのを声だけで表現できるのは、やはりhie.さんだからこそだと思いました。
あとはやっぱり刺されて死にそうになったときの演技が一級品ですね。本当に死にそうでたまらない。
鶏子さんも、ヒューバートは最初のイメージは「リュカに比べると少し抜けていて、子どもっぽい」という感じだったのが、
ふとした時に「あ、この子はこう見えて聡い子なんだな」と思わせる演技にハッとさせられました。
そして、リュカは比較的大人びていて、考え方もかなり大人っぽく、あるいはクール、もしくは冷めているタイプ、
ヒューバートは子ども特有の残酷さ  という、同じえげつない少年(笑)でも、はっきりとした違いがあるのも聴いていて楽しかったです。

ただ、偶に二人のお声が聴きわけづらい部分があったかなとも思いました。
わざとのような気もするけれど。


個人的に印象的だったのは、お話の最後のほうにある
「殺す」のも「殺される」のも、でも「生きる」のもつらい、というシーン。
こういうあまりにも我儘すぎる感情って、みんな持っているもので、でも隠し通そうとするし、認めない。目を背けてしまう。
でもそれを、あえてしっかりと全面に描き出してくるChemmyさんの作風と、それを書ききる筆力に感服いたしました。


◎ダスティ・ベルの不思議な絵本
とりあえず一番最初に思ったのが、
Chemmyさんの作品に成海修司さんが出演するとかパラダイスでは??
ということだったということをとりあえずお伝えしておきます。私はボイスコ界隈の人間の例に漏れず成海さんの大ファンです。

さて、そんなことは置いておいて。

上記、カレイドスコープとはまた少し違った雰囲気の、まさに「絵本」のような物語。
それも、所謂「大人の絵本」ってやつ。そんな風に思いました。
とにかく聴いた瞬間からダスティが可愛くて可愛くて!
そしてそのダスティとティグルの掛け合いが小気味よく、聴いていてとても楽しかったです。
私は多分、こういう喧嘩ばっかりしている二人組が好きなんですね……(笑)

カレイドスコープのほうは、わりとはじめから不穏な空気が漂っていましたが、
こちらはすくなくとも最初はわりと平和的で可愛らしくポップな感じからはじまって、
でもやはりそれだけでは済みませんでしたね(笑)
ちなみに一番最初にマスターの台詞を聴いた時に「はあ……成海さんは最高だぜ!」と思わず声が出ました

聴いていて思ったのは、「幸福」って、人によって様々だということでした。
文字通り「物語中」に登場するエイダ。
彼女は、他者から見れば地獄のような世界でも、まるで楽園のように感じていた。
だから彼女は絵本に捕らわれることを望み、でもダスティはそれを望まなかった。
どちらも「本」を愛し、「本の世界」に夢を抱いていたのに、そこを大きく分けたのは一体何なのだろう? と……
最初、エイダもマスターと同じく狂っているのだと思いました。
でも、もしかしたら「エイダ」があの世界に捕らわれることを選んだのは、ただ本が好きだからではなく、
マスター(コルトン)に同情・憐憫を感じていた、あるいは、愛情すらあったのでは…と思えてきました。
そしてマスターにとっての幸福は、「エイダ」が本の中にいること。
(後にダスティ/エイダの友達/も本の中にいて、二人で仲良く絵本の世界にいること。)
もしかしたらエイダは、マスターのその幸福を壊したくなかったのかも? 彼女はとても優しい人のようだから。
あるいは、エイダもまた、マスターを独り占めしたかったのかも。「最後に幸せそうに笑っている」というのから、そんなことまで深読みしてみたりして。

……エイダとマスターの過去が気になりますね。
この二人の関係がもっとよく分かれば、エイダの本心が見えてくるのかもしれない。

というか、マスターの身勝手さが最高に気持ち悪くて良いですね。
カレイドスコープのジェレミアとはまた少し違うクズっぷり。もう普通に犯罪者級。大好き。
成海さんは、イケメン系キャラクターをやることが非常に多い方だと思っているのですが、
私はこういうクレイジーでクズな感じの役柄のほうが、演技が輝くと私は思います。
(自作品で恐縮ですが)『EDEN-選ばれた果実たち-』の由利賀崎アザミとかもそうだったのですが、
ああいう狂気を隠してさも人畜無害そうな面して生きている男が、いきなりその本性を現し怒り狂う……その表現が本当に見事だな、と。
イカれた感じの笑い方が本当に本当に素晴らしくって大好きで、聴いていていっそ気持ちがいいです。
ちなみにマスターが本性を現したときも「はあ……やっぱり成海さんは最高だぜ!」と叫びました

それにしてもティグルが戻ってきた時は「イ、イケメン・・・!」と叫びましたね。
こんなにかっこいい猫がいただろうか、いや、いない(反語) 彼はヒーローですね


「夢の世界」って、「夢」だから良いんですよね。私もダスティの「憧れのままで十分」というのに非常に同感です。
それが現実になると、やっぱり面白さが半減してしまう。……それが何故なのか上手く説明はできないけれど。

それぞれの思う「幸福」のすれ違いが、本当に醜く、でも美しく悲しく描き出されている物語だと思いました。


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二作の共通点は、「『何かを持っている』と思い込んでいた『何も持っていなかった』、『何かを手に入れたかった』のに、『愚かな自分のせいで手に入れられなかった』馬鹿な男の話」かな、と。
本当に憐れで、人間的で、生々しく、それがとても魅力的な物語。

「聴く人を選ぶ」とChemmyさんご自身がおっしゃっていましたが、確かに選ぶかもしれないけれど、是非多くの人が聴いて、心にグサッと色々なものが刺さってほしいな、と思います(笑)
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